第2章 死  闘       

 

 淳と陽子は四階の窓から下を見ていた。男たちの影がわずかな街灯に見え隠れする。
「10、11人・・・・・・11人はいるな」
「何人か拳銃を持っている奴もいるよ」
 少し不安そうに陽子が言った。
 
 淳は陽子の首をいきなり自分の胸に引き寄せた。
「何するの」
 淳の胸の中で、くぐもった陽子の声がする。少し驚いてはいるようだが、嫌がる素振りはない。ただ、かすかに震えていた。
「何もしない。黙ってろ」
 
 そう言って淳は陽子を力一杯抱きしめた。やわらかな肢体がしなった。しなって、淳を温かく包みこんだ。数秒が過ぎただろう。
 抱きしめながら淳はビルの荒れたままの部屋を見ていた。陽子を引き離した。

「いいか、そこの机みたいな箱の中にいろ、動くなよ」
「私も手伝うわ」
「足手まとい、そういうのをありがた迷惑っていうんだよ……ゴメンな、いきなり抱きしめて。でも少し落ち着いた気がする」
 陽子はゆっくりと頷いた。
「なあ、お前のその細いベルトをくれ」
「いいけど」
 陽子はパンツからベルトを外して淳に渡した。
「それじゃ、そろそろ戦闘開始だ。無事を祈っててくれよ」
 淳は世界戦に向かう通路を思い出していた。

「なあ淳、お前は世界チャンプだ。防衛回数は確かに2回と16回で全然違う。奴は国の英雄、不世出の史上最強チャンプだとよ。でもな、お前だって時代が時代なら英雄だ。それは ただ国の経済、政治で違うだけ。これは統一戦なんだ。戦績なんかに負けてんじゃねえぞ」
 淳は知っていた。今の自分じゃ、90パーセントは負ける。残った10パーセントの自分の気力と運に賭けるしかないことを。でも自分をドン底から ここまで育ててくれたセコンドの倉さんの言葉に逆らうつもりはなかった。

「倉さん、わかってるよ、俺もチャンプさ」
 とは言ってみたものの、口の中がかわききって舌がもつれた。
 試合前はどんな試合であろうと怖かった。でも あの日は怖さより先になにか得体のしれないものを見たときのような、怯えた方が先におしよせてきた。
 まず確実に殺られると思った。相手は不世出の世界チャンプ、殺人貴公子、スーパーデストロイドマシーン〃サラテ〃というフィリピンのプロボクサ−だった。
 全てのマスメディアは吉川淳が何ラウンドまでもつか という内容に終始し、中には 「実力が違いすぎる。あまりにも〃ミス・マッチ〃だ」 と酷評する評論家までいた。

 本当に怖かった。淳は通路で その場面を思い出していた。
 あの時もヒザが震えていた。今も恐怖と戦いながら震えている自分がいる。
「俺もチャンプさ」
 淳は陽子に向かって唇の中で小さくそう呟いた。
「なあに? 今、なんて言ったの」
 淳は小声でそうたずねる陽子を見てうなずいた。ゆっくりとその部屋を出て静かにドアを閉めた。ドアのノブの冷たい感触が一瞬、淳をあの日につれ戻していた……。

 ドアから出ると会場は世界戦の興奮と熱狂が頂点に達していた。
 倉さんの肩に淳は両手を乗せ、小さくジャンプを繰り返しながらリングに向かっていた。硬いコンクリートの通路が妙にやわらかく感じ、足元がおぼつかなかったことだけは今だに忘れられない。
 日本開催と日本の世界チャンプである自分に敬意を表し、後からの入場をサラテは譲ってくれた・・・・・・。

――倉さん、なんだか良く分からないけど、生きるか死ぬかになっちまったよ、生き残れたら、またボクシングやろうな。
 淳は心の中でそう叫んでいた。今は一人で階段に向かっていた。
 そのビルは非常の際の階段が外壁に、未完成のエレベーターホール脇にもうひとつ階段があった。そしてエレベーターの通り道に一本のハシゴが架けられていた。

 淳はそれを利用したいと思っていた。2階部分の階段が見渡せる場所にまず身を隠した。「このビルぐらいしか奴らが逃げ込むところはない 五人は俺についてこい。非常階段から屋上に行き、しらみつぶしに探して降りてくるんだ。残りは下から中の階段で上がってこい」
 入口付近に集まった男たちの中で代表格の男なのだろう、他人に命令することに慣れた威圧的なしゃがれ声でそう指示を出した。
 淳にその声ははっきりと届かなかったが、追っ手が二手に別れたことだけは分かった。 1階から男達が探し回っている足音が聞こえる。
 淳は窓から外を見た。
 
 だれもいない。素早く窓わくにぶらさがると、おもいっきり飛びおりた。
 あまり着地は上手くいかなかった。そのまま身体を転がしてビルの陰に身を隠す。
 1階で淳たちをさがしていた男の一人がその物音を聞きつけた。おそるおそるドアから顔を出したが、出てくることもなく、外を見渡しただけで淳を見つけることはできなかった。
 雨も味方してくれた。淳はポケットからタバコを取り出し火をつけ、見つからないよう両手でかこって大きく吸いこむ。自分でも不思議なほど冷静になれる。

――1本吸ったらガキの頃を思い出して止められなくなっちまった…。分かってるよ、倉さん。生きて会えたらまたやめるよ…。
 そう心の中で呟きながら、淳はまた水溜まりを見ていた。
 そこには1、2ラウンドを必死に攻めまくる淳に対して、フットワークとダッキングだけで淳のパンチをはずし続ける、あの夜の天才ボクサ−が映ってみえた。
 淳は両手の拳を思いっきり握りしめた。淳の瞳がゆっくりと、なにか獲物を追うようにするどくきらめく。

「上に行くぞ!」
 男の声がした。淳は身をひるがえし、出入口に向かった。ゆっくりと上着を脱ぎ、ビルの陰にまるめて置く。タバコを足元に落とし、右足で踏みつけ中に入った。
 男達が階段を上がって行くところだった。一人は1階に残っているようだ。淳は男が一人になった瞬間、陽子のベルトを首にまきつけ、部屋にひきずり込んだ。締めあげながら二の腕で口を押さえつけていた。

「ウッウゲェー」
 男は小さくうめいていたが、やがて動かなくなり、時折、体をピクッとケイレンさせている。
 拳銃は持っていなかった。淳は男の持っていたナイフを腰にさし、巻き付けたベルトをほどいた。力いっぱい絞めあげたせいか、細いベルトは男のノドにくいこみ、軟骨まで潰していた。

「あと10人」
 窒息死したためか、ズボンの前を黒く濡らし失禁している男をその部屋の角に移してから、淳は人のいないのを確認して通路へ出た。小走りにエレベーターの脇のハシゴに近づいていく。
 エレベーターは1階と2階の中間で止まっていて、入口をベニア板で塞がれていた。幸い二階のベニア板の間から、すぐにエレベーターの上に上がることができた。
 
 淳はそのハシゴを一気に上まで登りつめた。
 わずか一ヶ月間だったが、乱れた生活が淳の健康身体を痛めつけていた。たった10秒たらず身体を動かしただけで息が乱れる。
「きついなあ、ロードワークの方がまだ楽だぜ」
 そう呟く淳の顔が次第に暗くなった。

「アイツ、死んじまったんだろうな」
 さっき絞めあげた男のことが気にかかる。できるなら、誰も殺さずに逃げだしたかった。 屋上のモーター室に出た。内カギを開けて注意深く外を見渡した時だった。
「動くな……」
 
 淳の斜め前に拳銃を持った男が現れた。鋭い声をかけてくる。淳は中腰のまま、みじろぎもせずに立ち止まる。
 目を閉じると、リングの中で打ちのめされている自分の姿がまぶたに浮かんだ。全身がカッと熱くなり、すぐに寒気が襲ってきた。心臓の動きが大きくせわしくなってくる。
「男のほうがいましたぜ。ハイ、屋上です」
 用心深く拳銃をかまえたまま、男がトランシーバーで仲間に連絡をする。

「来い」
 男はぶっきらぼうに言って、淳から目をはなさず歩き出そうとした。
 瞬間、男の銃口がわずかに揺れた。
 淳は、反射的に飛びかかっていた。獲物に飛びかかる狼のようなスピードだった。銃声が響いた。一瞬、閃光で眼がくらむ。
 弾丸が淳の肩をかすめた。

「ウッ」
 焼け火箸を当てられたような痛みに淳は小さくうめいたが、それと同時に男のくぐもった叫びも洩れた。腰にさしていたナイフが飛びこんだその勢いのまま、男の腹に突きささっていた。暫くどちらも動かなかった。

――どうした?――
 トランシーバーから男の声がした。
 反射的に淳は男から飛び離れた。鋭利な刃物が生きた肉体をひき裂く感触が、右手から全身をかけめぐる。恐怖と自分のしてしまったことの現実感のなさに、大きく目を開いたままくずれ落ちた男をみていた。

――どうした? なにかあったのか?――
 トランシーバーからの次の声で我に返った淳は、非常階段に向かって走った。
 かけ降りながら、
「いたぞ!」
という男の声を聞き、六階に転がり込んだ。身を隠した淳は大きく息を吸い込んだ。
 その時、右手がナイフを握ったまま開かないことに気づき、

「アアー」
 と子供のような泣き声をあげた。左手で右指をこじ開けようとしても、なかなか開かなかった。
 淳ははじめて血と死の臭いに包まれた自分に驚き、しゃくりあげながら呟いていた。
「あと九人・・・・・・」
 外はまるで嵐のようになっていた。
 午前3時40分。夜の闇はまだまだ深かった。

 2

 階段を男達がかけ上がる音が聞こえた。陽子は生命の危険にさらされている淳のことを考えていた。
 自分のために身を危険にさらしている淳のことを思うと、こんなところに身をひそめていることが許せなくなってくる。動くなと言われてはいたが、なにかしないわけにはいかなかった。
 陽子は少しでも武器になりそうなものを探しはじめた。
 
 パンツスーツのジャケットのポケットにそこいらに落ちていた長めの釘を数本と、砂や小石をとにかく詰め込んだ。
 長い髪はハンカチで結びポニーテールにしてドアに向かった。
 人影はなかった。
 ゆっくりとドアを開け、外に出た。中腰で足音を忍ばせながら少しずつ階段に近づいた。

 誰もいない……。そう思いながらハイヒールでは機敏に動けないことに気づいて、階段の横の部屋に滑り込んだ。
 ドアが開く音と雨と風の音が一気に入り混じった。
「神様……」
 陽子は祈った。祈りながら目の前にさびた鉄パイプが転がっているのを見つけ、素早くそれを握りしめた。
 男たちが一部屋ずつチェックして回っている足音がする。ときおり小声でなにかを話している。多分二、三人だろう。
 陽子は深く目を閉じた。緊張で唇の端が小さく震えている。

 3

 大黒重俊という男が、日本の政財界に底知れぬ影響力を持つようになった第一歩は、建設ブームにわく東京オリンピック前後からであった。
 それまでの大黒が、どのような人生を送ってきたかはだれも知らない。ただ、さまざま憶測が流れているだけである。
 1970年代から、大黒は、いくつかの新興宗教団体を設立した。目的は言うまでもなく宗教法人の特権を利用した税金対策にあった。

「熱心な信者が100人いればベンツを乗り回せる。200人でクルーザーだ」
 とまで言われる新興宗教教祖として、大黒は豊富な資金を政・官界にばらまいた。現金の臭いをかぎつけて、さまざまな人間が大黒のもとに出入りし、情報を流していく。その情報がカネを生み、いつの間にか、大黒は日本の政・財・官界から宗教界までもあやつる、「最後の黒幕」にまでのしあがっていたのだ。
 
 日本の中枢部に、カネと情報という、ふたつを大きな武器として権力のクサビを打ちこんでいた大黒だったが、その陰では多くの男達が血と涙を流してきた。
 そんな男達のひとりが陽子の父、幸崎修一だった。
 
 20数年前のことだった。父が生涯をかけて創立し、育み、上場寸前間でいった会社は、大黒の巧みな裏工作で倒産寸前まで追い込まれ、数週間後には手ばなさざるを得ない状況となっていた。
 陽子は砂場で遊んでいた初夏の夕暮れが、いまだに忘れられない。
 父の長い影が伸び、逆光の中にやつれて見えた。それでも精一杯の笑顔を見せる父が近づいてくる。

「陽子……陽子は何を作ってるんだい?」
「お山、お山にパパのお部屋も作ってあげるネ」
「そうかあ−、ありがとね」
 そう言って、父は陽子の砂山を作る両の手を黙って見ていた。そしてしぼり出すような声で誰に言うともなく呟いた。
「パパの作った会社、大黒くんに取られちゃったんだ……」
「可哀相ねえ、パパ」
 
 陽子は幼なすぎてなにも理解できなかった。ただ、その後、父が声をあげて嗚咽したことだけは鮮明に覚えていた。
 父が庭の楓の木で首を吊ったのは翌日の早朝だった。
 母は呆けたように庭に座り込み、黙って父の足に頬を寄せていた。陽子は何がなんだか分からず、両親の姿に本能的な恐怖心をおぼえて泣き叫び続けた。
 葬儀の時、大黒は父に両手を合わせていた。母はその背中に向かって

「あんたが殺したんだ! この恩知らず、人殺し!」
 そう絶叫した。陽子は大黒の背中を見ていた。
 大黒が帰り際に陽子の肩を抱いて言った
「別に死ぬこたあないのになあ。ね、陽子ちゃん」
 大黒は陽子に向かって微笑んだ。
 
 陽子はその顔とその言葉、そして、そのときの男の匂いを忘れることはなかった。
 それから20年。今、大黒は日本の陰の中枢と言っても過言ではないほどの大物にのし上がっていた。
 陽子も、この20年間で幼女から成熟した女へと脱皮していた。
 いくつかの恋をした。灼けるような恋もあった。しかし、心の奥底には、大黒への復讐を誓う冷めきった部分が、だれにも明かすことなく、だれにも踏み込ませることなく、沈殿していた。
 
 初夏の夕暮れの、やつれきった父を思い出すと、肉親だけに感じる全面的な愛情と、幼い陽子からそれを奪った大黒への憎悪がこみ上げてくるのだった。
 大黒には理沙という娘がひとりいた。
 S女子大をでてから、花嫁修業中の典型的な〃お嬢様〃で、来春には、ある与党大物政治家の息子と結婚する予定となっていた。もちろん娘すら利用しようとする大黒の政略結婚以外、なにものでもなかった。
 
 理沙の行きつけのスポーツ・クラブで、陽子は屈託なく話しかけ、一時間後には、もう十年来の友人のように親しくなっていた。世間知らずの理沙をとりこむことなど、陽子にとってたやすいことだった。
 理沙の紹介で大黒と再会したが、むろん、陽子が幸崎修一の娘だなどとは大黒は知る由もなかった。何度か大黒家に出入りするうち、陽子は望まれて大黒の個人秘書を努めるようになっていた。
 そして3年――。
〃陽子〃という名前のほか、陽子の本当の過去につながるものは、なにひとつなかった。

 4

 数時間前の大黒のオフィスでの出来事が眼前に蘇る。
 陽子は、グリップから銃身にかけて精巧な彫刻のほどこされた小型拳銃を構えていた。それは、もともと大黒の護身用の拳銃だった。
 陽子はこの男の悪行の数々の証拠となるであろうファイルを3年かけて、遂に手にした。

「このまま殺してやりたい。でも地獄を味あわせてあげるわ。いくら貴方でも、ここまでの証拠がマスコミで取り上げられ、警察に押収されれば 何もすることはできないでしょ」
「お前はいったい……」
 後ずさりした大黒に向かって陽子はどなった。
「動かないでッ!」
 大黒は陽子の静かな殺気に震えていた。

「私は陽子。聞き覚えはありませんか? その名前に」
「………」
「もう二十年も前の話ですものね」
「………」
 大黒は無言で震えながら陽子を凝視していた。

「それじゃあ、こんな言葉を言った記憶は残ってないかしら……。『別に死ぬこたあないのになあ、ね、陽子ちゃん』 いかが?」
 陽子は冷たく言い放った。
「お、お前は……」
 大黒は息を呑みながらゆっくりと膝からくずれ落ち、座りこんでしまった。

「幸崎の娘か、幸崎の娘の陽子ちゃんか」
 大黒は深く息をはき、弱々しく呟いた。
「陽子ちゃん、誤解だ」
「誤解なものですか! 私は貴方の秘書として3年間も働いてきたんですよ。全ては知らなくても貴方のしてきた悪事を自分の目で見て来ているの。貴方に家と会社を取り上げられた後、私たちは・・・」
 そう言うと陽子は大黒に向かって、父の無念、母の苦しみ、そして自分の人生を一気にはき出した。

「勝手にしなさい。殺したければ殺せばいい」
 大黒は開き直ったようにそう言うと、目を閉じた。陽子は引き金をひけなかった。
「……生命までもらおうとは思いません」
 そう言って陽子は部屋を出ていこうとドアを開けた。
 
 ドアの向こうに娘の理沙がいた。理沙は部屋へ入ると、後ろ手でドアをまた閉めた。
 理沙は泣いていた。陽子のことをずっと見つめていた。
 大黒は机のひき出しの奥からそっともう一丁の拳銃を出し、それを陽子の背に向けた。「ごめんネ、陽子さん」
 理沙がそう言って陽子に勢いよく抱きつき、互いの身体が反転した。と同時に大黒の指が引き金を引いていた。弾は理沙をつらぬいた。陽子は反射的に打ち返した。その弾は狙った訳ではないのに、大黒の腹部をとらえていた。
 大黒は腹を押さえ、前のめりに倒れた。陽子は理沙を抱きおこした。

「大丈夫、理沙ちゃん」
「いいから、陽子さんは早く逃げて」
「すぐ救急車呼ぶから……」
 理沙は首を横にふって陽子の肩をおした。

「先生! なにがあったんです!」
「先生、川奈さん、お穣さん、どうかしましたか? 明けて下さい」
 ボディガード兼任の秘書たちが集まって、ドアの外で騒いでいる。
 川奈というのが陽子の秘書としての名前だった。

「早く行って……早くう、裏から……大丈夫よ、私は」
 陽子はうなずいた。
「ごめんね、理沙ちゃん」
「ううん」
 理沙は首を大きく振って陽子に向かって言った。
「陽子さん、ずっとずっとありがとう」
 

この5年間、出会いこそ計画的であったが、陽子は理沙をまるで自分の本当の妹のように可愛がってきた。理沙のほうも陽子のことを姉のように慕っていた。
 理沙は自分の父と陽子の過去を知らされても、陽子が自分になぜ近づいてきたのかが分かっても、自分は父よりも陽子のことを守らなければと思ったのだった。陽子はその気持ちに心から感謝した。
「ありがとう、理沙ちゃん」
 陽子は雨の中に消えた。
         
 5

 雨は、まだまだ激しい。気温はかなり下がっているのに陽子の額は緊張と興奮でうっすらと汗ばんでいた。
 2人の男が、陽子の隠れている部屋にゆっくりと近づいてきていた。
 陽子はハイヒールのまま立ち上がって、両手で鉄パイプを握りしめた。
 前を歩く男の横顔が、闇の中に浮かんだ。陽子は鉄パイプを振り降ろした。
 意外な鉄パイプの重さにバランスを崩した陽子は前のめりになり、鉄パイプは空を切ってグワァ−ンと床を打った。
 男はすばやい身のこなしで陽子ののど元を突き上げ、壁に一気に押しつけた。そのまま頭を陽子の顔にぶつけてきた。
 頭突きで、あっという間に陽子の顔は鼻血で染まった。

「ヒャッ、ヒャッ、ヒャッ、川奈さんじゃありませんか」
 男はニヤニヤしながら言った。
 二人目の男が入って来た。
「いたのか」
「ああ……おい、ドアを閉めろや」
「知らせなくていいのか」

「女の生死は問わないってよう。さっき指示があったんだ。俺はこの女が昔から好きでなあ・・・ いいんじゃないか、やっても」
 もう一人の男も、下卑た顔に欲望の色をあからさまに浮かべながらドアを閉じに行った。 トランシーバーで呼ぶ声がした。男は陽子の口元を右手で強く押さえ、左手で腰に掛けていたトランシーバーを口元に寄せた。

「今のところ見つかりません。でも、必ず見つけますよ」
 通信を終えると、戻って来た男にそれを渡した。
「川奈さん、やっとお近づきになれたねえ」
 そう言って男の汚れた厚い唇が陽子に近づいてきた。強い口臭が吐き気を催す。
 陽子は横を向いて強く唇を結んだ。
 
 男が生暖かくヌメヌメとした舌を陽子の唇のまわりにはわせた。
 舌先が、唇が陽子の首筋、耳、頬とはいまわり、やがてツンと尖った形のよい鼻をベチャベチャと音を立てながらなめ始める。腕は身体中を撫で回していて、もう一人の男もしゃがみ込み、陽子の足をかかえていた。
 陽子の両腕は背中で交差させられ、それを腰から回してきた男の腕で押さえつけられていた。胸に手を押し込みながら、男は舌先を陽子の唇に無理矢理さしこんできた。陽子は一瞬、唇の力を緩めて男の舌を迎え入れ、すぐにそれを力の限り噛みつき、顔をそむけるようにして振りちぎった。

「痛ってえ!」
 男は口を押さえて転げ回った。押さえた指の間から血が吹き出すように流れでてくる。 陽子の口の中に生臭い血の匂いとともに生やわらかなものが残った。男の舌先の一部だった。陽子はそれをはき出して逃げようとした。
 走りだした瞬間、下にいた男に足を払われ床に倒されてしまった。
 何度も何度も蹴りつけられ、気が遠くなりかけたとき、男が馬乗りになってきた。
 ブラウスのボタンがはじけとび、ブラジャーが引きちぎられた。舌先を噛み切られた男は口から血を流しながらも、陽子のパンツを引きずり降ろしはじめた。
 
 慌てているせいか、なかなか脱がせられない。無理にひっぱったらしく、パンツの裾がピリッと破れた。
 布地ごしに、男の爪が陽子の太股のやわらかな皮膚にミミズ腫れをつくる。
 焦った男は、ヒザまでパンツを下げただけでショーツに手をかけ、乱暴にずり下ろした。
「へッへッへ、なるほどね、川奈陽子さまのアソコにも毛が生えてるんですねえ」
 乳房をもてあそんでいたもうひとりの男が、片手を陽子の下腹部にのばした。

「ウグッ」
 舌先をかみきたれた男は、痛みが怒りを倍加させるらしく、その手をじゃけんにふり払った。陽子のそこは、俺のモノだと言わんばかりの勢いだった。
「わかったよ、まずはお前がたっぷり味見しろや。俺はこっちのほうで楽しませてもらおう」
 上半身をもてあそんでいた男は、硬直したペニスで、陽子の乳首を突いて、なにがおかしいのか、大声で笑いだしていた。
 
 下半身では血まみれの男の唇が陽子の股間へ吸いついてくる。生あたたかな感触に、陽子は悪寒をおぼえた。冷汗がふきだし、止めようと思っても体が自然に震えてきた。
 陽子の髪の毛が、突然つかみあげられ、顔だけ宙に浮く。
 口元にペニスがつきつけられた。

「さあ、やさしくおしゃぶりしな。いいか、まちがえても歯をたてるなよ。万が一、そんなことをしたら……」
 男は、鋭利な工事用カッタ−をポケットからとりだした。
「川奈さん、あんたの口を切り裂いて、歯をぜんぶへし折るからね」
 言葉使いはバカていねいだが、目はこれまで多くの修羅場をくぐってきた男にしかみられない冷たい光をたたえていた。
 蹴りとばされた背中や腕が痛い。
 
 それでも陽子は必死の抵抗で、ヒザを力いっぱい体にひきつけた。
 股間に顔をうずめていた男の後頭部を陽子の右ヒザが直撃する。
 ガツッ
 鈍い音がしたと同時に、男は、馬乗りで陽子にペニスをつきつけている男の背中にぶつかっていった。
 男ふたりが、陽子の右側にからみあって倒れる。
 一瞬のスキをついて、とびおきた陽子が逃げだそうとしたが、パンツもショ−ツもヒザでたまっていて、走ることはおろか、十分に歩くこともできない。

「この野郎、下手に出りゃいい気になりやがって!」
 馬乗りになっていた男が、スナップのよくきいたバックハンドの平手打ちで陽子の頬を張りとばす。
 よろめくところを、舌をかみちぎられた男が、腰を蹴ってきた。
 そのまま倒れこんだが、陽子の抵抗もすさまじかった。
 
 必死に動きまわり、砂をぶつけ、爪でひっかいたが、頬を何度も殴られ頭を床に強く打ち付けられると、軽い失神状態となり抵抗できなくなってきた。 
犯されて、殺されるんだ……。
 陽子は少しずつ意識が薄れて行くのを感じてていた。

 6

 淳はもう決心していた。何人殺そうが、とにかく生き残る。そう思ったら今まで開かなかった右手が開いた。淳は息を殺してチャンスを待った。
――この部屋に人が入って来た時がチャンスなんだ……。
 男がひとり慎重な動作で入って来た。
 拳銃を構えている。男は淳を探しながらそろそろと歩いてきた。
 淳は男の後ろからノドを真横にかき切った。

「グエッ」
 男は押しころしたような呻きをあげて倒れた。切断された気管からヒューヒューと竹笛のような音が洩れ、鮮血がいきおいよく吹き出してくる。
 淳はあわてて拳銃を拾った。初めて手にした拳銃は想像以上に重かったが、てのひらにグリップがすぐなじんでくる。
 淳はナイフを背中におさめ、その拳銃を握りしめて走って部屋を出ようとした。殺された男の呻きを聞いたらしく、駆けつけてきた男とドアのところで向き合った。
 
淳は瞬間的に引き金をを引いた。
 強烈な反動で銃口がつきあげられた。
 男の胸がざくろのようにはじけるのを横目で見ながら、淳は半分は狂ったような表情で大きくわめき散らしながら通路を走り抜けた。淳の後ろから銃声が数発響いた。
 前方に別の男の姿を見て、淳は階段の踊り場に倒れこんだ。

「あと7人!」
 淳はその場で階段を上がるような音をたて、踊り場のすみに膝を立てて、これから現れるであろう男たちに残弾のすべてを叩きこもうと、引き金に指を置いて構えた。
「上だあ」
 叫びながら男が2人走って来た。最初の男の姿が見えた時、淳は続けて3回引き金を絞った。毒々しい尖光が銃口から閃いた。二人の男がほぼ同時のショックで吹き飛ばされる。
 
最初の男の拳銃が目の前に転がってきたのをすばやくひろいあげ、淳は上にかけ上がった。
 弾の尽きた拳銃は投げ捨てた。階段を拳銃が鋭い金属音をひびかせ落ちていった。
 7階のフロアに淳は逃げ込んだ。7階は広い部屋が左右にふたつしかなかった。

「我慢、我慢、我慢だ、淳。相手だって人間だ、ロボットじゃない。必ずチャンスが巡って来るから怖がるな。技量はそんなに差はないから」
 倉さんは淳の汗を拭きながら言った。
「わかってるよ、一度や二度のチャンスはあるよな。でもさ、奴とは技量の差はかなりあると思うぜ。でもさ、気持ちじゃ負けやしないから、倉さん。お互いギブアップはやめような」

「でもさ」を連発しながら、淳は不安を必死でうちけしていた。そんな淳をサラテがやけに優しい目で見ていた。
「この世界タイトルマッチが出来るなんて、本当はかなり幸せなことなんだ。きっとそうなんだ」
 淳は心の中でそうつぶやいて試合開始のゴングを待った。

「あの日も雨だったんだよな」
 淳は床に足を投げ出して雨のふり続く夜の闇を見ていた。
 今、目の前の敵と過去のリング上の自分の恐怖と、その両方と淳は戦っていた。
 すぐに攻め込まれ、打ちのめされる自分の姿が思い浮かんだ。
 
7階に上がってきた4人の男にも、もう余裕はなかった。何しろ淳ひとりに仲間が5人も殺られているのだ。
「いいか、奴は俺たちを待ちぶせている、気を抜くなよ」
 男がドアを開けた瞬間、中から淳が飛び出して来た。
 淳はろくに狙いもつけず拳銃を全弾乱射した。一人の男が至近距離から撃たれて顔をザクロのようにはぜさせて吹き飛ぶ。淳は振り向きもせずそのまま階段に駆け上がった。
 
 屋上に出るとまだ雨は降り続けていた。さっきの男の死体が横たわっていた。
 胃が硬直し、熱いものがこみ上げてきた。
「グエッ」
 なにも吐くものがなく、酸っぱい胃液が逆流してきた。口を大きく開いたままでいると、自然に涙が溢れてくる。その涙を袖口で乱暴にぬぐい、淳はそのままモーター室に飛び込んだ。

 7

 ガーン、ガーン、ガーン、ガーン、ガーン、何発の銃声が響いただろう。
 陽子の耳にもそれは届いていた。陽子はシャツのボタンをひきちぎり、ブラジャーを押し上げて自分の胸にむさぼりついている男と目が合った 下半身の方も唇の回りを血だらけにした男に、膝までパンツもショーツもずり下ろされもてあそばれていた。
 胴に巻きつけてあったファイルを強引に引き離した男は、陽子の乳首を吸いながら言った。

「こいつは大変なもんだ。先生が焦ってなさるのも無理ないな」
 陽子は右手でポケットの中の釘をまさぐった。
「そろそろ終わらせて上に行こう」
 男が言うと、下半身の方にいた男がパンツを下ろして硬直したものを陽子に押し付けてきた。大きく足を広げられ、陽子は微かに呻き声をあげた。
 胸にむしゃぶりついている男が唇を求めてきた。

「こいつ感じてるぜ兄弟。」
「そうかそうか 俺がもっと感じさせてやろう」
 不用意にのしかかってきた男の顔に陽子の握りしめた拳がつきあげられた。
「ウッギャ―」
 血しぶきが上がった。五寸釘が目に突き刺さっている。
 陽子は砂をもう一人の男に投げつけ、ショーツを引き上げもせず鉄パイプを拾い上げると中腰のまま力一杯二人の頭を殴り続けた。頭蓋骨が潰れ、耳から血と脳奬が吹き出てくる。
 
 二人の男が完全に動かなくなって、やっと陽子は止めた。
 陽子の小気味よく引き締まったヒップから太股にかけては返り血を浴びて鮮血がしたたっていた。
 ファイルをもう一度そのまま胴に巻きつけて、陽子は服を整えた。
 
 血をぬぐったジャケットは脱ぎ捨てパンツは膝のところまでまくり上げる。
 ゆっくりとハイヒールを拾い、そのヒールの部分を壁に力一杯打ちつけヒールをはじき飛ばしてから履く。
 その瞳には、こらえきれない涙が溢れていた。動きはヒステリックになっていた。男の腰に差し込まれたままになっていた拳銃を右手で引き抜いた。銃身にはサイレンサーがついていた。

―淳のところへ行かなくちゃ…。
 陽子はなぜか心からそう思い込んでいた。
「ウッウウ」
 まだ生きていたらしく、舌を噛み切られた方の男が小さくうめいた。
 陽子は無表情に引き金をその男の顔めがけて一度だけ引いた。乾いた小さな音がした。

 淳はモーター室のドアを少し開けて、ナイフを持って構えドアの横にピッタリと張りついていた。
「来い! 誰か一人だけ来い!」
 淳はあえてそう叫んだ。一対一ならともかく、相手は複数だ。こちらの居場所を知らせることで相手の動きを知ろうという苦肉の策だった。
 屋上にかけ上がった男たちがモーター室に近づいて来た。

「気をつけろ」
「ああ でも奴のチャカ拳銃はもう弾が残っていないから」
 そう言いながら男が身体をモーター室に入れた。
 淳は男を蹴り倒しながら、ドアを勢いよく閉めカギをかけた。
 男が起き上がりながら銃を向けた。淳はそれを蹴り落としてナイフを下腹部に突き刺した。男の太い腕が淳の首に巻きついてくる。
 強烈な力だ。淳の意識が遠くなりはじめた。

―そんな馬鹿な……。
 淳は必死でナイフの先に力を込め、えぐるように回してみた。ドアのカギを壊す銃声の音がしている。
 どのくらいたったのだろう。淳の首を絞めていた男の腕から急に力が抜け、ガクッガクッと崩れ落ちていった。淳は壁に沿って横に倒れた。
 急に空気を吸い込んだためか、激しくむせ返った。ドアが開かれ男が3人流れ込んで来た。男たちは倒れている仲間たちには見向きもしなかった。

「手間取らせやがって この野郎」
 むせ返っている淳は何度も何度も蹴り上げられた。身体を丸めてダメージを最小限にしていたが、後頭部を狙われ、淳の視界が急にぼやけてくる。
 
 気づいた時には、淳は上半身を裸にされ両手は後ろに回され壁のパイプに針金で縛られ固定されていた。
 淳は殺されると思った。陽子のことが心配だったがなんともならなかった。
「女をどこに隠した」
 男のひとりが淳の一ヶ月では落ちきっていない鍛え上げられた筋肉で隆起した胸をナイフで縦に浅く切り裂きながら、興奮を押し殺したような声で迫った。
「……」
 
 淳は呻き声すらもらさず歯を食いしばっていた。
 淳は胸にやがて無数の傷ができて血がプツプツとにじみ出し、玉のようになっては流れ落ちて行った。淳は絶えていた。

「川奈陽子をどこに逃がしたか聞いているんだ」
 男は淳のノド元にナイフを立てた。
 まだ十代の男がかたわらから声を掛けた。
「おかしいです。 誰とも連絡が取れません」
「そんなはずないだろう まだ何人かはや殺られずにいるはずだ」
 
 ナイフで淳をいたぶっている男の側で拳銃を手にタバコを吸っていた大柄の男が立ち上がった。
 淳はこの男が兄貴株なのかと考え、男の方に視線を移して言った。
「もうアンタ達 3人しか残っちゃいないんだよ」
 大柄な男が淳に近づいて来た。無言のまま3発、腹にパンチが入った。格闘技の心得はなさそうだが、ストリートファイトで鍛えた拳は正確にレバーをとらえていた。

「ヴッ」
 小さく呻きながら体を二つ折りにするが、内蔵をかき混ぜられるような痛みで吐き気すらおぼえる。
 淳は男を殺意のこもった目でにらみつけた。

「鋭い目で俺をみているな。許してください、そうお前を泣きわめかせてやろう」
 男は銃を隣の男に渡し、代わりにナイフを取り上げた。
「命ごいをしてみな」
 耳元で男は淳にねっとりとした声で囁くと、ゆっくりと汗の吹き出す淳の盛り上がった左の肩の筋肉にそのナイフを突き刺した。筋肉の束がナイフの刃にからみつき、ナイフの柄を大きく振るわせる。淳は歯を喰いしばりながら呻いた。

「川奈はどこだ」
「誰だ そいつは」
「お前が逃がした川奈陽子だよ」
 淳は痛さをこらえ薄笑いを浮かべた。
「あの女 川奈陽子って言うのか。初めて聞いたな、いい名前だと思うけど、どんな字を書くんだ」
 
 男は左肩からナイフを抜くと、淳の頬にそのまま薄く切りつけた。淳の左肩、頬はすぐに血に染まり始めた。
 淳は痛みに耐えながら静かに尋ねた。
「参考までに教えてくれよ」
「ふざけんな  女はどこだ」
 沿う言って、男はナイフを淳の右足のももに軽く突き刺した。
 淳の胸にだんだん恐怖が突き上げてくる。目を閉じて必死に耐えた。男の手が淳のベルトにかかり、ボタンを外しファスナーを下げた。
 
 男は太ももからナイフを抜くと淳のジーンズを下着と一緒に膝の辺りまでずり下ろした。
「ヒュー」
 男たちが笑いながら声をあげた。
 淳は何が起こるのか分からず、たださっきまでの生命を奪われるといったものとは異質の本能的にこみ上げる恐怖心で全身を震わせていた
 男は淳のあらわになった男性自身をを手で優しくしごきながら一人の男に外で見張るように告げ、もう一人の若い男には車に戻って仲間を呼ぶように命令した。

「……それから、もう一度ビルの中を注意して探して来い」
 そこまで言うと2人の男は外に出た。ドアが閉められ、雨の音も風の音もあまりしなくなった。
 淳の震えはより大きくなっていた。男と2人きりになってからは恐怖と嫌悪とが全身をかけめぐる。

「お前はいったい何者なんだ。素晴らしい身体をしているじゃないか」
 男は妙に優しい声で言った。
「止めてくれ」
 淳は身体をよじった。どうにもならない屈辱感からか、涙が溢れてきた。
「止めてくれ、そんなことするくらいなら殺してくれ、頼む」
「味わってから、ゆっくりとな。そう思ったからすぐには殺さなかったんだよ。わかるだろう」
 
 男はそう言いながら淳の前にひざまずき、そのまま腰を抱き、淳の下腹部に唇をはわす。その間も淳の男性自身を優しくしごいていた。淳の身体は何の反応も示さなかった。
「止めてください。お願いです」
 淳は泣きながら懇願した。淳は屈辱感と恐怖で、もう男であることを忘れ始めていた。
「頼む。頼みます。お願いです。止めてください」
 淳は鳴咽した。

第3章へつづく・・・
                        

【第1章 「出会い」】 【第2章 「死闘」】 【第3章 「復讐」】 【第4章 「逆転」&エピローグ】
  
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