柳ユーレイ


2003.11.10
NO.5
「英雄〜HERO〜」
監督・脚本・製作:チャン・イーモウ
出演 ジェット・リー/トニー・レオン/マギー・チャン/チャン・ツィイー
2003年/中国//99分
配給:ワーナー

ホントに更新ペースが遅いページだなぁ・・・我ながらそう思う。
忙しさにカマケてサボっている訳じゃないんだけど…でも結果的にそうなるか?・・・
映画はちゃんと観てるんだよ、マジで。
演出家の蜷川幸雄氏の監督作品第二弾「青い炎」とか
ニッポンでは超超話題作「マトリックス・リローデット」とか
それにさらに輪をかけた超超超話題作「ターミネーター3」とか
一応話題作はそれなりに押さえてるんだけど、やはり感想もそれなり…ということで。
終わっちゃうじゃん、それじゃあ、ダメじゃん! 
そう言えば「呪怨2」も観たよ。相変わらず怖いよ。

という訳で、色々と観た中で一番最近(と言ってももう3ヶ月以上も前の話ですが)のやつ
「英雄〜HERO〜」についての率直な感想を述べたいと思います。
と、本題に入る前に一言。まずこれから先は映画の内容に触れる可能性もあるため
ネタバラシ的な部分も出てくると思いますので、これから観てみよう!と、お考えの方は
ご注意下さい。それからもう一つ、僕はあくまでも単なる映画観賞家であって、
評論家ではないのであくまでも個人的感想と言うことでひとつ宜しくお願いします、です。

では本題です。
この映画は絶対映画館で観るべきである。(と、言ってももう上映は終わってますが・・・スマン)
逆を言えば、ちっこい画面なら観ないほうが良いということ。
何故ならば、この映画の見所は雄大なロケーションであるから。
もっとはっきり言えばそれ以外に良いところが見当らないと言うことなのである。
香港映画お得意のワイヤーアクションもいい加減見飽きた。
幾ら武侠映画に欠かせないものといっても限度があるだろう。
何せ目新しいアイデアは何一つ無く、殺陣のシーン全てがワイヤーアクションなのだから・・・。
もう、同監督作「グリーンディスティニー」とおんなじ。
ストーリーにしても、秦の始皇帝を暗殺しようという単純な話なんだけど、
大義を貫くために自らの命を掛けてまで仕組んだ決闘で、
殉死した筈の奴が実は死んでなかったりもう途中から落ちが読めるし・・・。
何万と言う軍隊に守られている始皇帝を倒すための必殺技と言うのがあるらしく、
ストーリーの中盤くらいからその、10歩以内に近づく事ができれば確実に
相手を倒せるという必殺技のことで話を引っ張るんだけど・・・
結局その技がどんなに凄い技だったのか?は明かされぬまま
史実に基づいた結果(始皇帝は死なず)で終わるというのは
いったいどういう了見なんだと、小一時間問い詰めたい。
まるで映画のタイトルであり、話の核であるにも関わらず最後の最後まで
その姿(?)を見せることの無かった、あの「稲村ジェーン」を思い出してしまいました。

あっ、「稲村ジェーン」といえば、公開が北野武監督作品
第二弾「3-4X10月」と同時期で、舞台挨拶に行くたびに
「稲村ジェーン」のTシャツ着てサーフボード持って「稲村ジェーン」の宣伝ばっかしてたら
松竹のお偉いさんたちが舞台袖で苦虫を噛み潰したような極渋の顔で
僕を睨んでいたのを思い出しました。余談ですが・・・。

という訳で、別に観なくてもいい映画じゃないかなぁ・・・
なんて思います個人的には。コレって営業妨害?

NO.4
『TAMALA 2010』 A PUNK CAT IN SRECE
監督・脚本.原作.音楽:t.o.L
プロデューサー:塚田誠一/三尾和子/t.o.L
声の出演:武田真治/加藤武/ペアトリス・ダル/佐藤54-71/Chritine Die-co★
オナン・スペルマーメイド/タロヒ レオゾウ/梁田清之/伊藤 龍/兵頭まこ
望月久代/ハラシマアツコ
2002年/日本映画/アメリカン・ビスタサイズ/カラー/ドルビーSRD/92分
配給:キネティック/配給協力:テレビ東京/www.tamala2010.com
ボクが普段は、まず見ることのない類の映画。
即ち アニメ―ションです。
そして、ここで取り上げる最初で最後のアニメでしょう…多分。
じゃあ 何故とり上げたのかと言うと 幾つか理由があります。

©TAMALA2010PROJECT

先ず第一に、大好きなネコが主人公である…と言うより殆んど猫しか出てこない。
だって舞台がネコ銀河系宇宙だから。
第二に、フル・デジタル制作であるにも関わらず
子供の時に見たアニメのような そんな懐かしさを感じさせてくれる。
『 TAMALA 』 の歩くときの効果音がかなり良い。
ストーリーが子供向けではない。 が、とても解りやすい。
細かな仕掛けがあちこちに・・・ それは見ての御楽しみ。
そして何より主人公の 『 TAMALA 』 が、モ〜 最高に可愛い。
               
                 『 Aggres'sive & Cute !! 』

という訳で わたくし 『 TAMALA 』 の大ファンになってしまいました。
ちなみに家の愛娘たち 「チッチ」 o r 「しっぽな」 のどちらかを
『 TAMALA 』 と改名しようとして怒られました。

今回の「TAMALA 2010 a punk cat in space」 は
三部作の第一話ということで、続編の「TAMALA in OR I ON」
完結編の「 TATLA 」と、まだまだ楽しみは広がります。

そして、本編にも登場する巨大複合企業体 『CATTY & CO』と
各企業とのコラボレーション(色々なイベントに 『 TAMALA 』が出没するかも?)など
映画の世界と実世界が交差するバーチャルワールドが展開する…らしいです。
個人的には この秋 NO.1注目の作品です。

『 TAMALA 2010 』公開情報 / 2002.10/19(土)〜渋谷シネクイントにて

NO.3
『ウインド トーカーズ』 WINDTALKERS
監督:ジョン・ウー 脚本:ジョン・ライス/ ジョー・バッター
製作:ジョン・ウー/ テレンス・チャン/ トレーシー・グラハム/ アリソン・ローゼンワーグ
出演: ニコラス・ケイジ/ アダム・ビーチ/ ロジャー・ウィリー/ クリスチャン・スレーター
2001年/アメリカ映画/3ビスタサイズ/カラー/134分
配給:20世紀FOX映画

呉宇森の文字を見てすぐにピンとくる人はかなりの映画通
そうです 今回は「フェイス/オフ」からの付き合いのニコラス・ケイジとの
二度めのタッグによる呉宇森即ち ジョン・ウー監督の最新作です。

設定としては、アメリカ海軍の通信兵として従軍してきた先住民ナバホ族と、
彼らを護衛することになったアメリカ兵との間に、第二次大戦中のサイパン島という
緊迫した状況下、人種を超えた友情が芽生えるという監督お得意の男同士の友情モノ。

軍への忠誠心と友情との狭間で揺れ動く、兵士の心の葛藤と状況としての
戦闘シーンが、上手く配置されているのではないかと思いました。

アメリカ軍側からの目線で描かれているので当然 敵は日本軍なのですが
不思議なことに気がつくと米軍側を応援している自分に気付く
攻撃を受けているのは日本軍なのに・・・おれって何人?
この作品観て憤りを持つ日本人ってどの位いるのだろうか?
目線が180度 変わった場合、果たしてアメリカ人の反応はどうなのであろうか?

そんなことはともかく戦闘シーン銃撃シーンの激しさにヤリーって感じ。
最初から終わりまで、ずっと ぶっ放し通しです。
火薬の使い方、量、凄まじさは流石ハリウッドムービー。
実際問題、発砲の撮影ってけっこうお金掛かるんですよ。日本じゃ まず無理。
ジョン・ウー、バンザ〜イ、もっとやれー!って感じでしたね。
そのへんは純粋に エンタテイメントとして楽しめました。

・・・が、やはり
戦争とは憎むべき行為であり決して礼賛されるべきものでないと思います。
たとえ映画が素晴らしい出来であっても。

ちなみに、だたひとつ笑ちゃったのが、戦艦からミサイルが発射されるシーン。
これから見る人もいるかもしれないので、あまり詳しくは言いませんが・・・
そのシーンだけ明らかに画が違う、ジョン・ウーの撮った画じゃない。
きっと戦時中の記録映像か?何か?の実験の映像を加工して
使ったとモノと思われ、けっこう緊迫感のある肝のシーンだけにチト残念。

NO.2
『ハンニバル』 HANNIBAL
監督: リドリー・スコット 原作:トマス・ハリス 脚本:デビット・マメット / スティーブン・ザイリアン
製作:ディノ・デ・ラウレンティス / マーサ・デ・ラウレンティス / リドリー・スコット 
出演: アンソニー・ホプキンス / ジュリアン・ムーア / レイ・リオッタ / フランキー・R・フェイゾン
ジャンカルロ・ジャンニーニ / フランチェスカ・ネリ / ヘイゼル・グッドマン
2000年/アメリカ映画/3ビスタサイズ/カラー/131分
ギャガ・コミュニケーションズ TBS 博報堂 WOWWOW ヒューマックスピクチャーズ 提携作品

更新しなければ…と思いつつも随分と時間が空いてしまいました このコーナ。
別に怠けていたわけではありません、
素晴らしい映画があまりにたくさんあり過ぎて…。

という訳で記念すべき2回目は超話題作であった「ハンニバル」
そうあのアカデミー賞を総なめにした「羊たちの沈黙」の続編です。

続編制作の最大の利点は、
全くの新作に比べ宣伝にかける労力が少なくて済む。逆に前作の
出来が良ければ良いほど些細な部分にまで厳しい目が光っている。
要するに両刃の刃¢蜒qット作の続編を制作するには
それ相応の覚悟と準備が必要ということでしょうか?

やはりキャスティングに関しては前作と同じであることが
絶対の条件だと思います…個人的には。
その条件がクリア出来ないのであるならば
そのプロジェクト自体をクリアにするべきだと思います。
そのくらいの覚悟がないならば
名作の続編などに手を出すべきではないと思います…個人的には。
それがプロフェッショナルのプライドというものではないでしょうか?
それとスタッフに関しても出来る限り同じであることが
望ましいのではないでしょうか?
監督・脚本・照明・カメラは是非前作と同じであって欲しいです。

前置きが長くなってしまいましたが、以上の点だけで推測するに
見る前からかなり厳しい目で見てしまうことは
やはり避けられないですね…個人的に。

レクター博士に関しては前作同様 Mr.アンソニーホプキンスが
演じているので その点に関しては合格なのですが…。

前半部のレクターは前作の流れを汲んだ知的な雰囲気があったが
後半になり登場シーンが増えるに従いその知的さが薄れ、単なる
平凡な殺人鬼に見え、一番の肝であるところの
不気味さというものがなくなってしまったように感じた。
たとえ演者が良くても脚本・演出がダメなら元も子もナシ。

稀代の殺人鬼に見初められるほど、
クラリス捜査官が魅力的な人物に描かれていなかった。
演じた女優さんに恨みはないが、
やはりジョディーフォスターのイメージが強すぎる。

クライマックスの結末が読める。ヒネリがなさ過ぎ。
やはり前作を凌ぐには至らなかったという事でしょうか?

はっきり言ってムダに過去の遺産を食い潰しただけ…
やらない方が良かったのでは?と、つい言いたくなってしまいました。

しかし、全てが悪いという訳でもなく ラストシーンの
子供と???のやり取りなどは とても意味深で薄ら寒く
暗い未来を想像をさせる良いシーンだと思うし、
刑事がレクターを追いかけていく サスペンスシーンのつくり方などは
ヨッ!リドちゃんヤルー ≠ニ一声掛けたくなるような流石の演出。

火曜サスペンス≠フサスペンス シーンなんかとは月とすっぽん
巨匠 ヒッチッコックと高校生の映画クラブ。
無声映画のバスターキートンとジャイアント馬場の
16文キックのスピードくらいの差がある。

決して最初から 「よーし、どんなしくじりをやらかすんだ?」 などと
芝居ひとつ出来もしない口だけのクソ映画評論家のように
斜に構えて観ていた訳ではなく単純に楽しんで観るつもりだったのに…
あまり良いコメントがかけなくてとても残念です。
やはりジンクスは生きていた…。

NO.1
『空の穴』
監督 脚本: 熊切和嘉
出演: 寺島 進/菊地百合子/澤田俊輔/権藤俊輔/外波山文明
2001年/日本映画/35ミリ/カラー/127分
ぴあ株式会社 有限会社フラミンゴ 株式会社ビームエンタテイメント 提携作品

一昨年 『鬼畜大宴会』で衝撃的デビューを果たした熊切和嘉監督の最新作。
「前作では出演者全員を死なせてしまった。
今度は誰も死なない映画が作りたかった。」という監督の言葉どうり、
35歳情けない男" を中心とした一見何処にでもありそうな日常を、
北海道の雄大な空の下、偶然転がり込んできた少女との 
ひとときの恋愛を通して描いたセンチメンタルな作品。

行く先々で前作との違いを嫌というほど聞かれただろうし、
また これからも聞かれたり、書かれたりするんだろうなぁ、きっと…。
悪いけどそんな野暮なことはしませんよ。ボクは…。
知り合いが出演してるは…監督から直々の手紙まで貰っちゃってるは…
で、絶対悪くは書けない、もうがんじがらめ状態。

まず良かったところ
寺島進氏演じるところの市夫が、
出て行こうとする少女妙子(菊地百合子)に懇願するシーン。
35歳独身男の情けなさ、必死さがとてもよく出ていたと思う。
とてもリアルでした。
個人的好みから言わせて貰えば、もう少し尺があればなぁと思った。
ハンディでガンガン寄って臨場感を出して欲しかった…。
あくまでも個人の好みですが。

あと いいなと思ったのは、変に凝った画とかが無かったこと。
カット割が少なかったこと。人の日常は淡々と過ぎてゆくものです。
その生活ぶりを表現したいのなら当然カメラワークも
淡々としたものでなくてはいけないと思います。
凝れば凝るほど その画はどんどんと日常から逸脱していくでしょう。

カットを細かく割り上下前後左右あらゆる角度から被写体を狙い
コレでもかと言わんばかりに凝って凝って凝りまくった
画ばかりをつなぎ合わたり、一部のスキもないほどに
CGオンパレードの映像が氾濫している現代、26歳という年齢で
これだけ落ち着いた画が撮れることに感心しています。

ただ ひとつだけあえて苦言を言うならば、
監督は自分が30代後半(市夫の年齢)になった時には、
その年代の美学が入りそうなので、
今の年齢(26)で30代後半の男の恋愛を描きたかったと仰ったが、
その年代(30代後半)の男から言わせて貰うと
やはり26の男の恋愛観が最後の最後で顔を出したのでは?と思いました。
35歳独身、あの環境の中で生活し、あの状況で失恋した場合、
果たしてあんなに早く立ち直れるものであろうか?
是非、その頃に もう一度 同じテーマで監督には作品を創って欲しいと思います。

PS. 次回作はアクション娯楽作品を一緒にやりませんか?



 いつになるか分りませんが… 次回もお楽しみに…
新作、旧作には拘らず 語っていきたいと思いますのでよろしく!

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過去 柳ユーレイが連載していた映画評
連載 辛口シネマ コラム 『 サンデー娯楽館 』

その当時の僕の認定印です。
興味がありましたら まぁ ひとつ覗いて見てくださいよ。



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