小説CLUB『 Lyrical Essay・我が愛する男たちよ!』
川田あつ子

ふたりの私


 ここ 2,3年、芸能界はもちろん、世間一般でも女性が年上というカップルは、かなり多くなってきたような気がします。「三つ年上の女房は金のワラジを履いて探せ」
 
 なんていうことわざもあるように、ずっと昔から珍しくもなかったのでしょうが妙に気になるところです。
「その男性、生涯の伴呂として頼りがいがあり魅力的でもあった。たまたま年齢が下だったというだけのことです。
 なんてよく耳にしますが、どうしてもよそいきの言葉にしか聞こえません。 
 
 ホントは年下の男性の頼りなさや未成熟さがかもしだす、なんとも言えない可愛らしさを意識する、しないにかかわらず求めていたのではないでしょうか。
 そんな女性は、ほとんどが精神的にも経済的にも大人で男性をリ−ドしていることが多いようです。自分自身の生活パタ−ンを変えずに男性を合わせる、愛情も包み込まれるものではなく、包みこむ、いわば母か姉のような心で見守っているのです。
 
 こんな例があります。
「火事になったら女はまず子供を、男は妻(恋人)を助けにいく」
 というのですが、夫(恋人)を助ける女性、子供を助ける男性がいても不思議ではありません。
 
 社会の一線で、自分の能力を十分に発揮したいという意欲を持つ女性がいて、逆に、出来るならそんなわずらわしさの中で働くより、家事を中心に好きな仕事を好きなときにしたいという男性がいれば、お互い、これほど都合のよいカップルはいないでしょう。
 でも心の底から愛している女性から、こんな風にされたい、もっと言えば泣かされてみたいと思っている男性がいるのですよ。マゾっ気があるとか、そんな変な意味じゃなくて、すべてに受け身だからじゃないでしょうか。
 
 愛する人のために、キッチンで料理に夢中な恋人へ
「俺さ、この頃、ちょっとお前とのこと考えてるんだ」
 なんて思わせぶりなことを言い『別れ話』らしきことをきりだす。ショックを受けた恋人の反応を確かめ、泣きだしたいじらしさに、愛しさがつのり、
「泣かせてごめん。なんだか意地悪したくなっただけだよ。ウソ、全部ウソ、お前しか愛していないよ、お前だけだよ」
 などと言って、仲直り…こんないたずら心をもつのは今まで男性だけの専売特許でしたが、いつまでもこんなことが許されると思ったら大まちがいの時代なのです。
「あ、そう。じゃあ別れましょう」
 と言われて、慌てるのがオチです。
 
 逆に、こんなふうに年上の女性から、からかわれてみたい、泣かされたいという男性は、くり返すようですが確実に増えています。もちろん、愛し合っているという前提条件のもとでしか成立しない関係だとは思いますが…。
 え?生意気なことばかり言っている、お前さんはどうなんだ、ですって?
 
 そうですね、愛の形は恋人同士の数だけある、だから、どちらがからかおうが、どちらが上位に立とうが、それは二人の決めること、と言っておきましょうか。
 
 ホンネ、ですか?
 そんなの決まってますよ。私を優しく包み込んでくれて能力も知識も十分に備わっていて経済力もそこそこあって、そして誰より私を愛ていつくしんでくれる人…。
 
 未成熟さの持つ可愛らしさがとても魅力的なのはわかりますが、理想は欲張り過ぎになっちゃうのかな。
 でも理想は理想、現実は現実なのかな? なにより一番大切な〃心〃を見ていたい。
 最後はハ−ト、これに尽きますよね。   

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