小説CLUB『 Lyrical Essay・我が愛する男たちよ!』
川田あつ子

Love & Dream

 
 人との出逢いって不思議なもの、全く予想もしないところから その人が現れて、全く予想もしなかった流れの中で自分の存在を確認して、相手の価値を見定めていく、初めはなんとなく、その出逢いのタイミングに押し切られて、やがて自分と相手との違いに閉口して、そんな中で二人の共通の価値観やよく似た心の中のパ−ツに巡り合って恋に落ちたりする。

 全く眼中に無かったはずなのに気が付くと奴が側に居て笑顔を見せていたりする。それは相手にとっても私が同じ様な存在だったりして、まあ、よく言う運命的なっていうことで片づく話しになる。

 どんなに性格がよくても、魅力的な人でも微かにタイミングを逃すと誰と出逢っても それはいつも決定的な出逢いにはならない。結局は縁が無かったということになってしまう。だから何事にもタイミングが肝心なんだと思う今日この頃の私なのです。だけど一つ忘れてはいけないこと、それはタイミングを見極められなかったのは全て自分の責任だということ。だから…。
 
 アリ−は18歳。今独り自分のベットにもたれて彼からの手紙を読んでいる。同じ手紙をもう何日、何度も繰り返し繰り返し読み続けているのだろう。
 
 ディア アリ−
アリ−、君のことが大好きで、僕はずっと君のことを愛していた。だけど君は結局、僕の恋人ではなかった。僕の大切な女性にはなってくれなかったね。アリ−、君は何時かきっと悟るはずさ。僕が君をどれ程 愛していたかを、だって世界中何処を探したって僕よりも深く、僕よりも強く君を愛せる奴は絶対に居ないことを僕はよく知っているから。もちろん今だって僕はアリ−、君を抱きしめたい。君の側に居たい。

アリ−、君に居て欲しい。本当さ。だけど もう前にも後ろにもどちらにも進めないなら、これで終章にしようと思う。それはね。アリ−、僕は自分自身を何処かに無くす為に君を愛している理由じゃないから、だから僕は僕自身を取り戻すために君を失うことにする。アリ−。僕は君と出逢って過ごした季節をずっと大切にすると誓う。そして君が僕に話してくれたこと全てと、僕のためにしてくれたこと全てに心から感謝する。ありがとう。何もかも。ずっといつでもどこでも、君の幸福を祈り続けるから…。
 グッドラック。
 
 アリ−は彼と一年半程前に出逢った。その後 恋人と呼べば恋人という関係、だけどいつしか不安なものを感じて少し距離をとっていた。しかしそれ以上に彼はいつもアリ−に優しかった。アリ−には、初めての恋人との別れの記憶があって、あまり近づき過ぎると、心を開きすぎると気持ちが離れてしまうという恋の行方がずっと心の中で繰り返されていた。

だから心地よいまま彼にあまえていた。だけど そういえばいつも彼はアリ−に「君のハ−トが欲しいんだ」と冗談混じりに言葉にしていた。彼はアリ−の心がまだ自分に無いことも、言い換えれば自分の心もまだアリ−に届いていないことも感じていた。ここ数日、アリ−は ずっとそのことを考えていた。その間、彼が現れることもベルが鳴ることすらも無かった。アリ−は迷っていた。 
 
 ポストに手紙が落ちる音がした。
 顔中を笑顔に包んでアリ−は外に飛び出して行った。真っ青な空の下でおもいっきり空気を吸い込んで それをゆっくり吐き出しながら緑の芝生に腰を降ろした。そしてもう一度、今、着いたばかりの彼からの手紙を開いてみた。彼は訪ねてくることも電話をすることもしないで、答えを手紙に託して来たのだった。
 
 アリ−、君の答えが もしも全く逆だったとしても、僕は待つつもりだった。今僕は、アリ−、君に贈る花束をバラにしようかユリにしようか迷っているよ。どっちがいいのかな?
 
 そんな文で結ばれていた。
アリ−は「貴方を失いたくはない」という返事を綴った自分と自分を見つめ直させてくれた彼に心からに感謝した。
 恋愛でも仕事でも待っているだけじゃ何も変わらない。タイミングをはずさないためには いつも攻めていなくちゃね。そう感謝の気持ちと共に。
 だから皆に、ありがとう!


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