小説CLUB『 Lyrical Essay・我が愛する男たちよ!』
川田あつ子

SAVING THE EARTH 〜サイン〜

 何故だかとっても怒りたいとき、誰でもいいから八つ当たりしたいとき、そんなときってありませんか?
 ほらッ、覚えている方もいらっしゃるでしょ?去年どこかの国の海水浴場・・・。そこには遊びに来た人達とイルカ達が直接肌と肌を触れ合わせて時間を過ごせる場所があるそうなんです。イルカ達のうちの一頭は女の子達と戯れるのが大好きで、きっと男の子だったんでしょうね。その日、彼はやっぱり水着の女の子達と戯れたかったのに、それを邪魔する男が現れたため腹を立て、なんと頭突きで殺してしまったというニュースを。

 私には、それがとっても印象深くて、何故だか理由を教えてと言われても 「感覚で・・・」としか答えようがないのですが。
 でも、きっとイルカが怒りだす前に何かのサインは出していたと思う訳で、
「もういい加減にしてくれッ!僕はあっちに行きたいのに!」

 ・・・って、もし話すことが出来たなら声にしてたと思うんだ。そういうサインを見逃すのってお互いにとってもとっても不幸なことで、楽しいはずのこれからが一瞬のうちに真っ暗になってしまう気がするもんね。

 それからこれは、決して簡単に触れられないことだけど、同級生の”いじめ”を苦に、それから逃れることを引き替えに、自分の命を差し出してしまった中学生の男の子もいたでしょ。彼もきっと一生懸命サインを出してたはずだよね。だからもう少し・・・。そんな想いがみんなに残った。そうしていたら命を落とす最悪の結末だけは妨げたはずだと思うんだ。

 でもニュースソースがTVと雑誌だけの私には、余り何も語る資格は無いのかもしれない。だからあの事件を目の当たりにした彼の同級生だけには、当たり前だけど彼の命を決して無駄にして欲しくない。それだけを彼のためにも祈りたいですね。

 だって人の命は地球よりも重たいんだから、でもまあ そういう考え方は人間のエゴかもしれないけれど、そう思う時があるのは事実だし、まして家族の命なら、父、母であり、兄弟であり、子供であるなら、そう思うのは確実で間違いないことだもの。だから愛する人のサインなら決して見逃さないようにしないとね。

 最近静かになったけれど、数年前ならどこでも見られた、銀座、六本木、街という街、夜という夜、毎日毎日繰り返される星の数ほどの宴、僅かなお金で手に入れたものが、ほんの数ヶ月後には億の値をつけてるような信じられない地価高騰、信じられない贅沢な生活風景、バブル絶頂期の頃を貴方は覚えていますか?あれは日本の国のサインだったと思うのです。

 そういった意味で、最近私は”地球”からのある種のサインを感じるのです。それは世紀末が近づいているからとか、そう予言されているからという訳ではありません。
 もちろん滅んでしまうほど地球が弱いと思っていないし、人間だってそんなに愚かではないでしょう。ただ唯一心配なのは、人間が地球にとっての癌細胞になっていないかということなのです。

 本来、地球と人間は、お互いを認め合い、助け合って生きていける関係にあって、それが最良であるはずなのに、人間があまりに調子に乗り過ぎて、ある日 悪性に姿を変えたのです。それでも今までずっと我慢してきたんだけど、もう「痛くて、痛くて仕方がない」、そう地球に思われてしまっていたら、きっと地球自身の自浄作用によって私達は除去されてしまうんだろうな・・・。

 今、私達は一度地球に聞いてみる必要があるのです。どう思われているのか、勇気をもって。

 イルカ達とと仲良く海辺で戯れる。そんな週末を過ごせて、お金で人が惑うような狂気の宴は二度と来ないで、”常軌を逸したいじめ”は、もう存在しないで、たとえあっても、私達の愛するこの地球のどこからも悲しみの声は聞こえて来ない。そんな未来を子供達に残してあげたいと思いませんか?

 そういうみんなの願いは、何時かきっと言葉や肌の色に関係なく、時代を超えていく。そう信じたいのは私だけでしょうか?
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