小説CLUB『 Lyrical Essay・我が愛する男たちよ!』
川田あつ子

見つめて

 環境破壊、大気汚染、熱帯林の消失、河川・海の汚染、温室効果、オゾン層の破壊・・・。
 すべて人間が地球にしていること、こんな言葉をただ並べていくだけで一体何ページが割かれてしまうのだろう。それだけで目には見えない、今すぐでは決してありえない(もっともあっても少しもおかしくはないのだけれど)。恐怖に震えてしまう私がいる。全然そういうことに詳しい訳ではないくせに、新聞、雑誌、TVの言葉にすかっり踊らされて、夜になると独りになると、時々フッと考え込んでしまう。

 冬はあまり花がない・・・!? ないはずなのに・・・ある。

 街のお花屋さんは色とりどりの美しすぎる花たちで溢れている。そういえば秋にはもう、春の花で一杯だったもんね。
 今年の冬はけっこう寒い!!寒いはずなのにそうとも言えない。わずかに外気に触れる時だけ・・・。
若いから?ちがうちがう。コートもマフラーも、荷物になるだけ、東京でも生活はけっこう暑い。てな具合で、いつもは突然にマヒされている神経が夜になると、ムクムクッと首をもたげて 「ちったぁー考えろッ!」って私に指示する。私はソファーにゆっくりともたれかかって傍らのミネラルウォーターを口の中に流し込んで瞳を閉じてみる。

 海や川はあくまでも美しく。野には動物たちが駆け巡り、大空には鳥たちが舞う。太陽が降り注ぐ。輝いている。
 それが自然だったのに、それが自然の本来の姿だったはずなのに、今、TVの箱に映し出されるものは・・・何故だろう。

 そうしているうちにも、何の理由も無く、悪いことは何もしていないのに生命を奪われていく人たちがいる。
それも食べるものが無くて・・・人間の歴史の中で飢えから解放されたのは、ほんの少し前からだと聞く、ただそれも先進国と呼ばれる国々だけの話しである。実際、世界中では食べる物の無い人の方がずっとずっと多いのだから。テーブルに食べきれないほどの食事を並べ、どこの国のだ、何年ものだと、たかがアルコールにまで文句をつけ、TVはずっとその向こうに、まるで別世界を映し出す。呼び出された大きな瞳の栄養失調の子供たちを見ている。その子供たちに同情している。でも幸せな自分たちをこちら側でしっかりと確認しながら同情している。そんな私たちに一体、何が出来るのだろうか。

 あそこに飛んで行って助けてあげられるかい?
 御免なさい。私には出来ません。御免なさい。でもあれは、戦争のせいなの?
 ああ、そうだよ。
 戦争はやめてッ!
 
 私の頭は単純だから、これだけはすぐに出来る気がする。

 引き金を引くのはやめてッ!
 人間同士が生命を奪いあうのだけはやめてッ!
 仲良く、助け合って頑張ることは必ず出来るはずだよッ!

 それは理想だよ。そんなことすべての人間が解っていることなんだよ。白人も、黒人も、黄色人も、みんなね。でも実際に戦争はあるんだよ。
 どうして?戦争をするとお金が儲かるから?そんな人たちのために戦争をさせるのはよくないと思うよ。絶対に。

 だから世界には、戦争なんてさせないように努力している人たちもたくさんいるんだよ。
 そうね。でも今、人類史上、最も簡単に人の生命を奪える時代なの、だから引き金を引くのは、もっともっと真剣に考えなくちゃいけないの、一番、頭を使って知恵をふりしぼらなくちゃいけない時代なの、そういう時代なの、今が大事なの。

 わかってるよ。わかってる。

 何も出来ない。
 何も出来ない今の自分自身が歯がゆくなったりする。だけど私は私だから、自分自身精一杯生きなくちゃ、大きな瞳の子供たちを祈りながら、せめて自分のまわりの私の愛する人たちだけは力の限り大事にしよう、大切にしよう、と思う。
 
 さぁ、子供たちにご飯を作ってあげなくちゃ!
 子供?猫ちゃんだよッ!
 
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